【小説】三四郎(夏目漱石)

あなたはよっぽど度胸がない方ですね。

恋愛による苦悩をテーマにした、夏目漱石前期三部作「三四郎」、「それから」、「門」の1つです。

明治期の文学者、夏目漱石の長編小説。初出は「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」[1909(明治42)年]。続いて書かれた「それから」「門」とあわせて前期三部作とされる。主人公の三四郎は母のいる九州の田舎から東京に出て、大学で学問や思想の深い世界に触れる。またミステリアスな美禰子との恋愛で「迷える羊」としての自分を自覚していく青春小説。「無意識の偽善家」として描かれた美禰子は森田草平と心中未遂を演じた平塚らいてうがモデルだという説がある。森鴎外はこの小説に触発されて「青年」を書いた。(Amazonより)

  • 感想

田舎から上京した大学生三四郎が3つの世界を知り、悩みます。

①全てが平凡で、慣れ親しんだ「故郷」

②全国から人が集まり、学び、自分の考えを議論する「学校・職場」

③美しい女性たちとの「恋愛」

多くの現代人も、この3つの世界を住み分けているのではないでしょうか。地元に就職して学生時代や地元の友達を生涯の仲間とする人、上京して仕事に集中する人、その中で様々な恋愛もあると思います。

私は全国転勤をしていて、今は地元を離れ場所で暮らしています。「故郷」と「職場」が違うため、「職場」がある場所で1から人間関係を築かなければなりません。この点、「故郷」と「職場」が同じ人は、学生時代の仲間と何年経ってもすぐ会え、遊ぶことができるため、私は羨ましいです。一方、優秀な人材が全国から集まる東京の方が、自分のビジネス能力を上げためには環境としては良いと思うこともあります。自分が仕事・プライベートなど何を重視し、どのような生き方をするかは人それぞれですが、自分の生き方について改めて考えさせられる一冊でした。

また、三四郎は真面目すぎるため、「恋愛」の世界では上手くいきません。偶然、同じ布団で寝ることになった若い女性に誘惑されたものの手が出せず、「あなたはよっぽど度胸がない方ですね。」という言葉をかけられる程です。物語中で恋した美禰子に対しても、あの時の会話ではこう返せばよかったとか、こうしたら迷惑に思われるのではないかと悩み、アプローチすることができません。物語の最後に思い切って「あなたに会いたいからここにきた」とアプローチするものの、美禰子には既に婚約者ができており、恋が叶うことはありませんでした。いつの時代も、男性は優しい・良い人だけではダメで、多少の強引性も必要だと自省させられます。恋愛小説としても非常に考えさせられる一冊だと思います。

  • 本書を読んで得たもの

迷える子羊(ストレイ・シープ)にならず、自分の道を自分で決めていく。