【小説】それから(夏目漱石)

姉さん、私は好いた女があるんです。

僕の存在には貴方が必要だ。どうしても必要だ。

恋愛による苦悩をテーマにした、夏目漱石前期三部作「三四郎」、「それから」、「門」の1つです。「三四郎」の主人公が成長したそれからの姿が、「それから」の代助であるとされています。

明治期の文学者、夏目漱石の長編小説。初出は「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」[1909(明治42)年]。「三四郎」の後に書かれ、次の「門」とあわせて三部作とされる。漱石自身の予告によれば「「三四郎」には大学生の事を描(かい)たが、此(この)小説にはそれから先の事を書いたからそれからである」。主人公の代助は三十歳を過ぎても親からの仕送りを受けて優雅に暮らしている知識人「高等遊民」である。かつて親友に譲った三千代と再会して、人妻である彼女との愛を貫く決心をする。愛を代償に社会から葬られる夫婦はどうなるのか。(Amazonより)

  • 感想

裕福な家に生まれ、親の仕送りで芸術を嗜む「高等遊民」の代助が、幼馴染の妻・三千代に恋し、悩みます。親の勧めに従い見合い相手と結婚するか、自分の気持ちに従い人妻と結婚するのか、自分の頭が真赤に燃え続けるまで代助は悩みます。

本書では、全体を通して、「自然(自分の意思)」に従い生きることの大切さが問われていると感じました。現代でも、親・家族・世間体を気にして、自分のやりたいことができていない人も多いのではないでしょうか。代助は、物語の最後に、自然(自分の意思)に従い、三千代と暮らすことを選びます。しかし、三千代が結婚する前に、自然(自分の意思)に反して想いを伝えなかったことを非常に後悔します。他人の目・世間体を気にして、やりたいことをやることができない現代人にとって、非常に考えさせられる一冊です。

三四郎」では、美禰子が三四郎を愛しながらも、自然(自分の意思)に反して他の男性と結婚してしまったと考えるのであれば、「それから」はその対比となっているでしょう。

また、本書では、現代人の働き方についても一石を投じています。人々はなぜ働くのでしょうか。本来は、働きたいから働くのが理想です。しかし、現代では、仕事の目的が働くことではなく、生活のためという人も多いのではないでしょうか。これも、自然(自分の意思)に従っていない一例であると考えます。もっとも、代助は三千代との生活資金のため、自然(自分の意思)に反して生活のための労働を強いられてしまいますが。仕事にしろ、恋愛にしろ、遊びにしろ、それを他人・世間体のためではなく、自分がやりたいために行う。そんな人生を送りたいものです。

  • 本書を読んで得たもの

自然(自分の意思)に従い、自らの人生を自らのために生きる。