【哲学】悩む力(姜尚中)
情報ネットワークや市場経済圏の拡大にともなう猛烈な変化に対して、多くの人々がストレスを感じている。格差は広がり、自殺者も増加の一途を辿る中、自己肯定もできず、楽観的にもなれず、スピリチュアルな世界にも逃げ込めない人たちは、どう生きれば良いのだろうか?
本書では、こうした苦しみを百年前に直視した夏目漱石とマックス・ウェーバーをヒントに、最後まで「悩み」を手放すことなく真の強さを掴み取る生き方を提唱する。現代を代表する政治学者の学識と経験が生んだ珠玉の一冊。生まじめで不器用な心に宿る無限の可能性とは。(「BOOK」データベースより)
- 感想
私は本書を読むまで、悩むことは時間の無駄であり、他人より悩み・考え過ぎてしまう私の性格に少なからず劣等感を感じていました。しかし、本書では「悩む力」にこそ、生きる意味への意志が宿っているとしました。
近年では、ITなどの普及により「個人主義」が進み、地域のコミュニティや家族との繋がりが薄れています。例えば、数十年前までは当たり前だった地域・家族の付合いも薄くなり、隣人との交流がない人も多いのではないでしょうか。数十年前では、親が決めた人生を歩むのが当たり前、数百年前では自分が仕える主君の言うとおりにすることが当たり前でした。しかし個人主義の近年では、自分で「考える・決断する」ことが以前より求められています。他人の言うとおりに考えずに行動することに比べ、自分で人生を考える・決断する際に悩むのは当然ではないでしょうか。特に、非常に多くの選択肢があり、様々な価値観がある近年で、より良い人生を送ろうと考える人ほど尚更です。
本書では、近代化による個人主義の発展の中で人生について悩み続けた夏目漱石とマックス・ウェーバーを参考に、悩むことは「より良い人生を送る」ために必要なことだと語られています。より良い人生を送るため、ついつい考え・悩み過ぎてしまうと感じる人には非常におすすめです。考え・悩み過ぎることについて価値観が変わる本です。私は、悩み続けたことを作品にぶつけた夏目漱石やマックス・ウェーバーの本を読み、再度本書を読み返してみようと思います。
- 本書を読んで得たもの
徹底的に悩み・考えぬくことこそが、より良い人生を送るための唯一の手段である。