【小説】吾輩は猫である(夏目漱石)

 吾輩は猫である。名前はまだ無い。

明治期の文学者、夏目漱石の最初の長編小説。初出は「ホトトギス」[1905(明治38)年〜1906(明治39)年]。1905年10月上篇が刊行されると20日間で売り切れたという。中学教師の珍野苦沙弥の家に飼われる、名前のない猫「吾輩」の目で、珍野一家とその周囲に集まる人々や「太平の逸民」の人間模様を鋭く風刺し、笑いとばす。落語のような語り口に乗せたユーモアは多くの読者を集め、夏目漱石の小説家としての地位を確立する記念碑的な作品となった。(Amazonより)

  • 感想

最初に本書を手にした感想は「分厚い」でした。500ページ以上に渡り、注釈付きの文章が並んでいます。しかし、本書は11章のほぼ完結された物語で構成されているため、1章ずつ読んでいけば特段負担ではありません。内容も物語形式で読みやすく、ゆっくり読むとしても1時間程度で1章が終わるのではないでしょうか。

内容は、「名前がまだない猫」の口を借りて、人間社会への風刺が散りばめられています。例えば、近代化する前の時代では、主君や家族が絶対で他は自らが属する集団のために己を犠牲にしていたが、今では教師に逆らう生徒・家族をないがしろにする子供が見られ、「俺が、俺が」と主張するようになった。また、実業家・泥棒・詐欺師に代表されるような、他人を陥れ自らの利益しか考えない「自己中心的」な人間も増えた。などなど、21世紀でもよく耳にする話題が登場します。

また、様々なユーモアも各所に散りばめられており、読んでいて中々飽きない構成になっています。発刊から100年以上たった今でも面白いのですから、発刊当時の人にとってはさぞかし衝撃的な本であったに違いないでしょう。実際、ネットやテレビの広告がない時代に、発刊20日で売り切れてしまうほどです。「ずうずうしいぜ、おい」に対して「Do you see the boy か。なに君と僕の間柄じゃないか。」と返すやりとりは一番印象に残っています。

  • 本書を読んで得たもの

他人を陥れるようなことはせず、幅広い年齢層との人間関係を大切にする。