【金融】ドキュメント銀行 金融再編の20年史(前田裕之)

銀行とはどんなところで、何を考え、どう行動しているのか、よく知っている人は少ないのではないだろうか。「銀行業とは何か」「銀行は安全なのか」という疑問に答え、これから銀行とどう付き合うべきかを考えるヒントを提供するのが本書の狙いだ。

日本の大手銀行がバブル崩壊後にどのような運命をたどり、5大金融グループがどんな経緯で誕生したのか、その時代を象徴する経営者らが傾いた銀行の再生に奮闘する姿を描き出す。また、銀行の「新陳代謝」をテーマに、地方銀行・第2地方銀行と、インターネット銀行などの新設銀行を取り上げる。

最後に、銀行業の 本質を、経済理論を紐解きながら解説し、銀行はどうあるべきか問題を提起する。(「はじめに」より)

 

  • 感想

銀行業界の歴史書として非常に参考になります。この1冊だけで、現在の銀行が、都市銀行を頂点にどのように成立したのか十分理解することができます。さらに、銀行のビジネスモデルについても、銀行の収益構造の基礎的な説明から、実際の銀行を例にとった各銀行の強み・弱みの比較、今後の業界動向などが書かれています。金融機関に勤めていない人にとっては多少難しい内容となっていますが、一読の価値は十分あります。金融機関職員、銀行ビジネスの概要を知りたい人、就職活動で金融業界を志望する人にとっては必読の本です。

日本の金融機関がどのような経緯をたどり、現在の巨大銀行(三菱UFJ、みずほ、三井住友、りそな、三井住友信託)に集約したのか。「大和銀行」のニューヨーク支店巨額損失事件から「りそなグループ」誕生と実質国有化。長期信用銀行日本興業銀行日本長期信用銀行、日本債権信用銀行)の消滅と「みずほグループ」「新生銀行」「あおぞら銀行」誕生。UFJ銀行争奪戦を経た「三菱UFJグループ」「三井住友信託銀行グループ」の誕生。経済・景気が回復した時期に合併再編が起こるという説を裏付ける「三井住友グループ」の合併。実際の事例をもとに

背景・意図が分かりやすくまとめられています。

さらに、3メガバンクグループが金融コングロマリットを形成して業務範囲を広げる一方でATMによる手数料ビジネスに集中する「セブン銀行」、金融機関の貸し渋りにあっている中小企業の資金繰りを支援したいという石原東京都知事の意向を受けてスコアリングモデルを活用した「新銀行東京」、楽天を利用する企業・個人向けに口座数を増やす「楽天銀行」、フィンテックブームに乗じたITベンチャー企業の台頭、国の管理課という要素の強い「日本政策投資銀行」「商工組合中央金庫」「ゆうちょ銀行」が金融業界に与える影響など最近のトピックスも幅広く取り扱われており、合併再編が続く金融業界の将来も予想されています。

  • 本書を読んで得たもの

公共・サービス面ではなく、収益面という観点からみる銀行ビジネスの奥深さ。