【ビジネス書】シャオミ 爆買いを生む戦略(黎万強)

  • 本書を読むきっかけ

みなさんは「シャオミ」というスマホメーカーをご存知でしょうか。日本ではほとんど取扱いがないため知名度は低いですが、中国にて設立6年で年間8,000万台ものスマホを販売した人気メーカーで、サムスンやアップルを抜いて中国シェア1位を争う企業です。

iPhoneは9万円程度なのに対して、シャオミの高級機種であるMi5は4万円程度、廉価機種Redmi(紅米)3は1万円程度と、低価格での販売が成功の要因とされています。しかし、最大の要因は、ユーザーとともに企業活動を行う「ファンビジネス」にあります。ユーザーを巻き込んだ製品開発、口コミの誘発などマーケティング手法を学ぶため、本書を読んでみたいと思います。

ちなみに、中国人旅行客が大量に家電等を買う意味での「爆買い」は登場しません。

 

中国で150万部を超える大ベストセラー! ! 

設立6年、年間8000万台のスマートフォンを売りまくり、世界トップクラスのメーカーにのしあがった小米科技(シャオミ)の知られざる戦略

共同創業者の黎万強氏が自ら初めて語ります! 

シャオミのスマートフォンが売れるのは、アップルのパクリだから、格安だからと思われてきた。しかし、決してそうではない。これまでのメーカーにはありえなかったまったく新しいものづくり、売り方を推し進めたからこその成果だ。共同創業者の黎万強は、シャオミの強さの秘密を惜しげもなく公開する。(Amazonより)

 

  • 感想

ここ数十年で、消費者が商品を選ぶ基準は大きく変化しています(機能型消費→ブランド型消費→体験型消費→参加型消費)。

①機能型消費

物がない時代に消費者が腕時計を買う際には、正確な時間を刻むかが判断基準です。

②ブランド型消費

一定品質の商品が出回った後、消費者はブランド力を判断基準の一つとするようになります(ロレックスなど)。

③体験型消費

ブランド品も出回った後、消費者はモノ(製品)からコト(体験)を消費することを求めます。旧態依然として老舗百貨店は、店に滞在する楽しさを追求したショッピングモールに取って変わられました。例えば、「イオンモール幕張新都心」では、敷地面積は東京ドーム4個分の19万2000平方メートルに。吉本興業劇場や仕事体験テーマパークなど、360店のうち約3分の1を体験型サービスとし、店に滞在する楽しさを追求することで好業績を上げています。

④参加型消費

そして現在、参加する楽しさを求める「参加型消費」の時代が近づいています。消費者は、自らがサービス・商品を提供する一部分となって、サービスに貢献している感覚を求めています。ユーザーが参加するニコニコ動画SHOWROOMなどサービスは最たる例でしょう。また、AKBの人気も参加型消費をうまく活用しています。AKBでは「会いに行けるアイドル」をコンセプトに、これまでファンの手に届かないアイドルと交流でき、自らの投票で総選挙ランキングが決まるなど、ファンも活動の一部として参加することができます。

 

そこで、シャオミでは「参加型消費」を目指し、ユーザーとともに企業活動を行う「ファンビジネス」を重要な経営理念としています。具体的には、以下の2点を大切にしています。

①ユーザーと共に優れた製品をつくり上げること。

シャオミでは、1週間ごとにユーザーの意見を集約・開発・テスト・リリースを行い、毎週金曜日の「オレンジ・フライデー」にOSのバージョンアップを行うことで、ユーザーの製品開発への参加意識を高めました。

これまでの時代では、製品をユーザーに販売した時点で、製品は完成したと考えられていました。例えば、冷蔵庫を販売した後に、製品の修正などは行いません。なので、時間をかけて良い製品を作ることが重要とされていました。一方、IT化が進んだ現在では、販売した時点を出発点として、ユーザーの意見を取り入れ製品を改良するプロセスが重要になります。

②宣伝やプロモーションはユーザーの口コミに頼ること。

シャオミでは、SNS活用・ユーザー参加型イベント・徹底したアフターサービスにより口コミを誘発し、主要なマーケティングツールとしています。

これまでの時代では、口コミは近所付合いの雑談に限られていました。そのため、企業の宣伝活動では、大規模な広告により商品性能を一方的にPRすることが中心でした。一方、 SNSが普及した現在では、個人が気軽に情報を発信することができるようになりました。そのため、ユーザーは、企業がPRする製品の優れた点ではなく、友人知人の口コミによる評価をもとに商品を購入するようになりました。例えば、食べログなどが最たる例ではないでしょうか。しかも、広告には莫大な宣伝費用がかかる一方で、口コミによる宣伝では費用がかかりません。

 

本書では、参加型消費時代・SNS時代におけるマーケティング手法について学ぶことができますが、ビジネスについての新しい考え方も学ぶことができます。中国独特の文化もあると思いますが、日本の大企業とは全く異なる考え方に触れることは、自らのビジネス思考に新たな視点を加えることができると考えます。

日本企業の成長を紹介したビジネス本を多く読んだ人、口コミなどマーケティングに興味がある人に特にオススメです。

  • 本書を読んで得たもの

これからはユーザーを巻き込んだ参加型消費「ファンビジネス」の時代が到来する。